トポスパブリック
松本直樹「ランドルト環とエクササイズ」 2018年10月〜12月ランドルト環とエクササイズ
よく慣れ親しんだ、視力検査で使われるC 字型のマーク--これを開発者であるスイスの眼科医エドムンド・ランドルトの名にちなみ「ランドルト環」というらしい。多くのひとは、左右を混同しやすい幼児期において、この円環の切れ目を指でさしめした憶えもあるのではないだろうか。「視力検査」は、我々の様々な知覚と動作が織りなす身体を、この「ランドルト環」を挿し込むことで「視覚」という知覚から「手の動き」という行為へと短絡化してしまう。そもそも「測る」ということは、それまで「(漠然とした全体として)あるもの」へ、暴力的に「尺度を持った客体性(スケール)」を差し込むことをいう。とはいえ、メジャーやさしがねなどと違い、「ランドルト環」が我々に抱かせる興味深さは、強制的にあらゆる刺激を被験者に与えその脳波を測る、といった残酷な人体実験や、あるいは催眠術師の手にかかり、見事に操られてしまう間抜けな被験者の滑稽さにも似ている。なぜなら、厚みをもった身体が「ランドルト環」を中心として、「視覚」から「手の動作」へ、いともたやすく折り畳まれてしまうからではないだろうか。身体が「ランドルト環」という蝶番によって、パタンと音を立てるかのように「測られるもの」と「その結果を示す徴」へと還元されてしまうのである。 今回展示する小作品は、この「ランドルト環」を使った、いわばエクササイズである。「ランドルト環」がエクササイズをしているのはもちろん、これらがみなさんの知覚と行為のエクササイズとなれば幸いである。 文責 松本直樹
2017 年4 月より、北島眼科クリニック「待合室」にて現代絵画作品を展示する、トポスパブリックを始動する運びとなりました。 クリニックと現代作家(画家)が互恵的に社会環境を創出するこの企画は、来院された方々は勿論、医療従事者ならびに、 絵画作品の癒しの機能性をはかる画家を交え、従来の共有空間をよりよきものとするための試みとして発想されました。 三ヶ月毎に入れ替わる作家作品を、お愉しみいただければ幸いです。
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